近代日本の産業を支え、我々の豊かな生活を潤してくれた産業の現場は、近年の経済衰退によって、その一部はもはや稼動する事もなく、主を失い廃墟化して荒れ放題といったところも少なくない。言い換えれば、現代において負の遺産として放置されている。

古代遺跡や歴史遺産としての価値も見出せず、たかだか数十年の間で廃棄されたのも同然の建物(ホテル、学校、旅館、遊戯施設、工場、造船場、倉庫等)、コンクリート構造物(橋脚、外壁、エントツ等)、銅山、炭鉱、採石場、減反政策と働き手のいなくなった田、畑、山林等が無言のまま横たわっている。また不動産以外のものでも、家電を代表とする産業廃棄物、風化されてしまった記憶(火災、津波、地震、伝説、伝承、歴史、市町村合併等により名前のなくなった町、村、路地裏等)、数えあげればキリがないぐらいに我々の周辺に社会的な損失を象徴するものとして「近代産業遺産」は存在している。

これら「近代産業遺産」が全国各地に点在している事実に我々は無神経で居続けられる事ができるのか。

「近代産業遺産」とその活用に対して、抜本的かつ、実務的に解答が急がれている時代に、芸術の立場からこれを有効利用、また地域の活性化、新たな表現の獲得を求めて、その具体的な展開への学術的調査研究および実務作業を目的としてここに「近代産業遺産アート再生学会」を設立します。


近代産業遺産と近代化遺産

よく混乱するのが、この近代化遺産と近代産業遺産との違いである。

近代化遺産という言葉は文化庁が名づけたものであり、時代的には幕末、明治、大正、昭和初期に日本の近代化に貢献した建造物(構築物、工作物も含む)で産業・交通・土木に関わり、近代的手法によって造られたものである。 乱暴な言い方をすると近代化遺産は他の構造物に見られない機能美を持っており、歴史的・文化的にも価値のあるものであると言える。

ここで我々が提唱する近代産業遺産であるが、時代的には戦後の構造物等であり、ハードのみでなくソフトを含めてのものである。もちろん先の近代化遺産もこの近代産業遺産に含まれるが、ある意味、近代化遺産は歴史・文化的に見ても価値のある構造物であり、地元の保存する会とか、行政が文化財に登録していくとか、それなりに保存活用がされているのが現状である。

これに比べて、戦後構築された構造物等は経済優先に裏づけされた機能性のみを追及したものが多く、味もそっけもない構造物がその機能を失い、歴史的遺産としての価値も見出せず、無残にもその姿をさらけ出している。
むしろ、こういった構造物の方が近代化遺産より、多数全国にちらばっているのである。

=その分類分けとしては=

@ 廃業したホテル、旅館、遊戯施設、造船所、炭鉱、紡績工場、その他の工場、倉庫、寺、学校等。

A 建物を除く、コンクリート構造物(橋脚のみ、外壁、エントツ、歩道橋、鉄道等)。

B 銅山跡、採石場跡、田、畑、山林等。

C 不動産以外のもの、産業廃棄物、情景、風景、歴史、伝説、伝承、名前が消えてしまった路地、町、市、村の名前、風化された記憶(地震、津波、火災等)。

@〜Bは主に不動産が対象であり、近代化遺産も含めて、現在、即物的に展開されているものもある。
Cの分類がこの近代産業遺産アート再生の特長でもあるが、モノとしての動産、また人間のみがもつ抽象的なイメージも近代産業遺産として捉えている。

結論として、歴史的価値を見出せる近代化遺産も近代産業遺産としてそのカテゴリーに捉えるが、一般的に歴史的価値を見出せないものを近代産業遺産として捉えている。


アート再生とは?

ここでも、よく勘違いをおこされるようだが、つまりアート再生という言葉に即物的に反応される事である。
外壁にペインティングしたり、オブジェをつけたりとか・・・そういったものをアート再生と思っている事である。
そういった表面的な事ではなく、ここで言うアート再生とはアーティストの目をとおして、フィルターをとおして、構造物等だけ、いじる事を考えるのではなく、その構造物等の今までの歴史、伝承を捉え、そこに存在する地域にどのように還元し、点としての近代産業遺産ではなく、面として地域をも含んだ継続的に展開できるプランを提出していく、ソフトを構築していく事がアート再生である。

結果的にオブジェだらけの構造物になったとしても、上記のコンセプトのもとでは、毎年そのオブジェは変わっていく事だろうし、構造物そのものの捉え方もまた変化していく事だろう。


近代産業遺産アート再生学会とは?

●この学会はビジネスを踏まえた実務部隊の組織でもあります。
●この学会は当然、学術・調査研究・発表も行う組織です。
●この学会は近代産業遺産アート再生・摩訶不思議アートツーリズムのソフト管理するものであり、監修、版権管理も行う組織です。
●この学会は産学官連携の組織です。
●この学会の精神はワクワク・ドキドキする、おもしろい事をやって、社会をハッピーにする組織で、場合によっては特別会員に八百万の神々が参加する事もあります。
●この学会の究極の目的は人類の救済であり、世界平和であり、自然を畏怖する事であり、森羅万象に多情多恨であれ・・であります。
●この学会は今までになかった新しい学会を創出します。
何故なら、学会もまたアート再生ですから!!

(京都造形芸術大学プロジェクトセンター教授 近代産業遺産アート再生学会  副会長  関本徹生)