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「近代産業遺産アート再生学会」設立によせて
立岡 浩(花園大学)
chk-rsh@fa3.so-net.ne.jp アートをはじめとした創造的産業は、個人や組織の創造性(Creativity)に基盤 を置くもので、その創造的活動やプロセスの成果を事業化することで社会的経済 的な価値を生み出す産業である。 創造的経済(Creative Economy)論に基づく創造的産業では、希少資源の配置に 重点をおく伝統的経済理論と異なり、潜在的に無限の資源を使用して、良質の資 源(創造性)を数多く生産し、流通させ、興行し、利用に供されるとともに、2 次的に活用され、その活用物のリサイクル形態での再生産も行われるという、資 源循環サイクルも構築されつつある。 創造的産業は、英国では創造産業(Creative Industry)、米国では著作権産業 (Copyright Industry)、フランスでは文化産業(Cultural Industry)、日本と韓 国ではコンテンツ産業(Conten Industry)と呼ばれ、各国とも波及効果が最も大 きく、経済成長の牽引役になっている。 創造的産業群は、英国ブレア政権の創造的産業タスクフォースによれば、広 告、建築、美術・骨董品、工芸、デザイン、デザイナーズ・ファッション、映 画・ビデオ、ゲーム(テレビ、コンピュータ、オンラインによるゲーム)、音 楽、舞台芸術、出版、テレビ・ラジオ、コンピュータソフトウェア・コンピュー タサービスなどが含まれる。 筆者も、ここ3−4年間、創造的産業群の一つである、映像コンテンツ産業の 非営利及び公民協働セクターの国際比較研究に取り組んできており、英国、アイ ルランド、ルーマニア、米国など海外諸国の当該産業組織への現地フィールド調 査を行ってきた。調査結果の中で特質すべき点は、複数の地域で、コミュニティ 再生型の映画映像も含めた複合アートセンターがコミュニティ再生として、地域 の活性化にかなり大きく貢献している点である。 このように、創造的産業群の中で、付加価値が最も高くつきやすいのがアート 的著作物であり、また波及効果の最も大きいものがコミュニティ再生もしくは都 市・地域再生であるといってもよいだろう。つまり、付加価値も高く、波及効果 も大きい創造的産業群の1つが、アートによるコミュニティ再生ともいえよう。 アートによるコミュニティ再生の動向は、コミュニティ・アートの議論とかな りオーバーラップする。「コミュニティ・アート」は、コミュニティー・ベース ト・アート(Community Based Art)、アート・ベイスト・コミュニティ・ディベ ロプメント(Art Based Community Development)、コミュニティ・カルチャル・ ディベロプメント(Community Cultural Development)などとも呼ばれ、「アート によるコミュニティ再生」は「コミュニティ・アート」とほぼ近似していると いってもよい。 「コミュニティ・アート」は、アートを「アートのためのアート」として日常 生活から遊離した存在にとどめるのではなく、アートがもつカタリスト(触媒) 機能に着目し、コミュニティが直面する問題解決や、民主的かつ健康な社会を実 現するためのツール(道具)として利用していくものである。 本学会の目指す近代産業遺産の芸術的発想によるコミュニティ再生の手法 は、もともと廃棄されたも同然な資源の有効活用であり、マイナスの遺産をプラ スの資産に転化させる仕組みの1つでもあるともに、資源循環サイクルを保持す る創造的産業群の1形態として最も有効な活用手法であるといえる。 今後、本学会では、近代産業遺産アート再生事業として行いながら、コミュニ ティ・アートや、アーチストと政府・企業・NPO・市民との総合的公民協働のあ り方を、国際的視点から比較・検討していくことが重要ではないかと思われる。 (参考文献) 1)立岡浩・山崎茂雄編『21世紀の映像コンテンツ産業の政策・経営とコミュ ニティ』中央経済社、2006年2月(予定) 2) デジタルコンテンツ協会(2005)『デジタルコンテンツ白書2005』。 3)秋葉美知子(2005)「アメリカにおけるコミュニティ・アート形成に果たし たAPI(Art in the Public Interest)の評価」文化政策研究大会2005 in 浜 松・予稿集、pp.61-64。 | |